virtue


 何をしているのか、ヴェインには良くわからなかった。
 ただ、解るのは、自分の手がラーサーの両手を拘束してベッドに縫い止めていると言うことと、自分の身体がラーサーに覆い被さっていると言うこと。
 ふるふると小さく震えながら、ラーサーは小さく「兄上、止めてください」と譫言のように繰り返している。
 瞳から、ぽろりと涙がこぼれた。それは、磁器のような頬を伝い、ゆっくりと落ちてベッドに吸い込まれていく。
 頭の中が、真っ白になる。
 ヴェインは自分の意志とは無関係に、ラーサーの襟元に指を伸ばした。そっと襟元をくつろげ、ゆっくりと着衣を奪う。味わうようにヴェインがラーサーの首元に唇を寄せたとき、ラーサーは絶えきれないと言うように頭を振って唇を噛み締めた。
 この兄に、何を言っても無駄だということを悟ったのかもしれない。
 ヴェインの手が、ラーサーの肌を辿る。嫌悪感に堅く目をつむり、ラーサーは何度も頭を振る。
「ラーサー……、落ち着きなさい」
 唇から迸った言葉に、ヴェイン自身が驚いた。言葉も甘く響く。ラーサーはヴェインを見た。怯えた瞳が、兄の凶行を詰っている。
 けれど、ヴェインは止めなかった。ラーサーの幼いからだをまさぐる手が、震える。
 ヴェイン自身が止めようとしているのに、何者かに操られるように―――行動が止まらない。
 薄い胸を辿ったとき、鴇色をしたかすかな突起を掠めたラーサーの背筋が跳ね上がる。ふるえが止まらなくなり、目を瞑って耐えようとするが、堪えられなくなったのか、甘い嘆息のような吐息を漏らす。その端々が濡れて甘く聞こえた。
 それに唇を寄せ、舌先で転がしたり軽く吸い上げると、ラーサーは唇から小さな喘ぎを漏らした。我慢していたものが耐えられなくなり、ラーサーが快楽に溺れていくのが良くわかった。意識が甘く混濁していくと、甘い喘ぎが幼い唇からひっきりなしに漏れるようになる。
「……ぇっ………あにうえ………あ………」
 それが、止めてなのか、それとも別の言葉なのか。
 ラーサーにもヴェインにも解らない。何百回も頭の中で『やめろ』を繰り返しているのに、身体がこの幼い身体を欲している。全身を隈無く唇で愛撫していくと、ラーサーはすべてを諦めきったのか、ただ、素直に声を張り上げて快楽を訴えるだけとなった。
 ラーサーの、幼さを残した器官も、快楽を主張して頭をもたげた。
 餓えたようにヴェインはそれに貪り付いた。思いがけない感触に、ラーサーは目をいっぱいに見開いた。兄を詰りたくても唇が震えて、言葉にも喘ぎにもならず、尖った呼気を漏らし続けるだけだった。
 止めろ、止めろ、止めなくては……。理性が止めるのに、身体が止まらない。それどころか、次第に行動は大胆になり性急に幼い身体を求める。
 幼い器官を双球ごと口に含んで口腔で愛撫する。全身が、羞紅に染め上げられ、幼い身体にそぐわずに酷くアンバランスで――――淫靡だった。
「……あ、………ぁ……あに……うえ……っも………た……すけ……」
 喉を仰け反らせ、小さな身体が弓なりに反る。羞恥と官能の間に揺れるまなざしが、怯えたように兄を見る。
 潤ったまなざしは、もはや兄を煽るだけのものだった。
「兄上、兄上、兄上………っ」
 上擦ったせっぱ詰まった悲鳴を上げて、ラーサーは堅く目を瞑った。脚が、ふるっ、と一度震え力が抜けたようにラーサーの身体はだらしなく弛緩した。
 口腔内に、苦み走ったものが広がる。青臭いような………生命そのものの、匂い。ヴェインは、口腔内のそれを飲み込み、口の中に脈打つそれを優しく舌でねぶった。
 何が起きているのか、ラーサーも理解してしまった。知識としてだけならば知っていた。けれど、それ以上のことは知らなかった。自分の手で、埒を開けたこともない。半ば無理矢理、敬愛する兄に、しかも口腔で射精させられた事実に、ラーサーは打ちのめされていた。
 呆然とするラーサーの腰を抱え上げ、ヴェインはそっと脚を広げた。
「っ!!!?」
 あられもない姿を晒され、恥かしくて死にたくなりながらラーサーは暴れたが、兄の力に敵うはずもなかった。
「あ……あにうえ……っ、これ以上は………っ、お願いですっ……」
 ぼろぼろに泣きじゃくりながら言うラーサーを、ヴェインは哀れに思った。ヴェインも止めてやりたかったが、止められなかった。奥まった蕾に口づけると、ラーサーはびくん、と身体を大仰に跳ねさせた。
「や………や……、兄上……っあにうえ……っ」
 ここから先の行為を、必死に拒むが、ヴェインにそれを止めることは出来なかった。
 唇と舌先で、丁寧に丁寧に愛撫すると、最奥へと誘い込むように淫らな収縮を始める。自分の身体に起こっている変化と、兄の凶行に付いていけず、ラーサーは正常な思考を放棄した。
 虚ろな瞳が、涙を流し続けている。それは、ヴェインの胸を痛めたが、ヴェイン自身の高ぶりは、もう、この幼い身体を貪り尽くすことでしか止められないものになっていた。
 ひっきりなしに漏れる甘い喘ぎ声と、涙混じりの悲しい嘆息。意志を無くした瞳から、滂沱たる涙が流れる。
 それを唇で拭ってやりながら、ヴェインは己の高ぶりを、幼い身体に沈めていった。
 酷く、中は熱く、ヴェインの進入を拒むように締め付けてくる。止めてやりたかったが、やはり止められなかった。
「力を抜きなさい」
 耳許にささやいて、軽く耳朶を噛む。痛みすら快楽になってしまうらしいこの幼い身体を、ヴェインは貪り続けることしかできなかった。




 朝起きて、最初に視界に入ってきたのは、兄の部屋の天井だった。
 体中が酷く痛んだ。
 昨夜のことは、ラーサーは明確に記憶している。途中で意識を飛ばしたが、明け方、うとうとと目を開くと、兄が慈しむように抱きしめてくれていたのを思い出す。
 精悍な裸の胸に、すり、と頬を寄せた瞬間、兄は小さく何かを呟いた気がしたが、ラーサーの耳に届く前に、意識が闇に飲まれてしまった。
 目覚めるときも、兄の腕の中にいるのだろうかと思っていたラーサーは、その兄が隣にいないことに、少し、違和感を覚えた。
 鈍く痛む身体を起こしてみると、兄は寝台の端に腰を下ろし、顔を手で覆い隠していた。
 ラーサーが起きたことにも気が付かないらしい。ヴェインは、小さく、「なにをしてしまったんだ……」と呟いていた。
 ラーサーは、兄が、昨夜のことを後悔しているのが不思議だった。
 元老院の者達からの耳打ちでは、兄・ヴェインはこういったよこしまな欲望を、ラーサーに向けているという情報を得ていたからだ。
 だったら、確かめてみようか―――、とラーサーは思った。その気がない人間をその気にさせるクスリ………所謂、媚薬というものを、悪趣味極まりないことに軍事目的でドラクロア研究所が開発しているらしいことは知っていたから、それを2、3、失敬してきた。
 いつものように兄の元に遊びに行き、穏やかに夜の一時を過ごす。その時、兄は、茶を入れてくれる。
 それに、一粒、入れてみた。
 効果があるのだろうかという、純粋な興味もあった。兄が、本当に、そう言った意味で、欲望を自分に向けているのか知りたい気持ちもあった。茶を飲みながら、ドキドキした。
 効果はあった。そして、兄はやはり、ラーサーに欲望を向けてきた。それには、満足だった。
 勿論、正気でない兄を相手にすることが怖くて、途中から本気で怖くなったが。
 だから、今日の朝は、ラーサーの予想では、ヴェインはラーサーを手に入れた喜びを、ラーサーに向けてくれるはず………だった。
 青い顔で、震えている兄の姿など、ラーサーは想像もしなかった。
「………あの、兄上………?」
 おそるおそる声を掛けると、ヴェインはハッとしたようにラーサーの方を向いてから、すぐに床の方に視線を落としてしまった。
 重い、重い沈黙が続いた。ラーサーは、裸の肩が冷える頃、ひとつの結論に辿り着いた。
『兄上は、昨夜のことを、後悔しているのだ、と』
 そう実感したら、急に涙が溢れた。はたはたと、涙が止めどなく溢れ、止まらなくなった。涙が落ちる幽かな音を聞きつけたのか、ヴェインが顔を上げ、秀麗な眉をひそめて項垂れた。
「………すまない」
 聞きたかったのはそんな言葉ではないのに、とラーサーは思った。唇を噛み締めて、シーツを握りしめて、何とか声を漏らさないようにと耐えたが涙だけは止まらなかった。
「お前を、傷つけるつもりはなかった………ただ、すまない、何を言っても、言い訳になるな」
 呟いてから、ヴェインはラーサーの涙を指で拭おうとして、その手を引っ込めた。
 いつだって、欲しい言葉を兄はくれた。ラーサーが今欲しいのは、そんなものではない。
「……怖かっただろう……。身体も………無茶をしてしまった。………今日は、休みなさい。みんなには、私の方から言っておく」
 努めて、冷静でいようとするヴェインにラーサーは苛立った。立ち上がって、政務に向かおうとするヴェインに、ラーサーは言う。
「逃げるんですか」
 ぴたり、とヴェインの動きが止まった。政務に逃げてしまえば、確かにラクだった。見透かされたようで、ヴェインは「すまない」と呟いて項垂れた。
「なんで………」
 ラーサーのつぶやきにヴェインは微苦笑した。
「どうして、こんな事になってしまったのだろうな………」
 それは、ラーサーに取って、衝撃的な一言だった。
 兄は、別にこういう欲望をラーサーに向けているのではないと言うこと。昨夜のすべてを、後悔していること。
 できるならば―――――無かったことにしてしまいたいと、思っていること。
 ラーサーは、自分が、兄に何をさせてしまったのか、今更気が付いて、腕を抱いた。ぶるぶると、体中が震える。
 ヴェインは見かねて、ベッドの傍らから肩掛けを取ってラーサーに掛けてやった。
「………私を、許さなくて良い。すべては、私のせいだ………お前が、悔やむことはない。すべて、私が悪いのだから」
 優しく呟くヴェインのことばに、ラーサーは胸が痛くなった。思わず、嗚咽が漏れ、ヴェインは、慰めの言葉ひとつ見つけられずに、しばらく立ちつくしていたが、「すまない」と言い残して去っていった。
 いつのタイミングで正気を取り戻したのか、一通り、身支度は綺麗に整っていた。今から休むために、と傍らに夜着の用意もしてあり、ラーサーはそれを手に取った。
 立とうと思ったが、脚に力が入らず、毛足の長い絨毯に倒れ込む。あの媚薬の効果は、覿面だった。
 兄の理性をとろけさせ、その気のない弟を陵辱するという凶行にむけさせたのだから。
 兄は、酷く傷ついていた。ラーサーを傷つけてしまったと言うことに、傷ついていた。
 また、涙が溢れて止まらなくなって、ラーサーはベッドに戻った。兄の香りがする。それが、酷く切ない気分にさせた。



 腕や、手や、足や唇や………体中が、昨夜の感覚を克明に記憶していた。
 いっそ夢ならば、と思うが、夢ではない証拠に、ラーサーを己の欲望で貫き、揺さぶったとき、彼がしがみついた爪痕が、腕に残っている。夢ではない。
(では、悪夢だ………)
 怯え泣き叫び哀願する弟に、蹂躙の限りを尽くした自分の浅ましさに、ヴェインは吐き気がした。
 耳に残って離れない、哀れな悲鳴。涙を流しながら、助けて、と目で訴えてくるいたいけな瞳。
 己の腹の奥底に、こんな薄汚い欲望が眠っているなど、ヴェインは知らなかった。いや、もしかしたら、今まで知っていて、蓋をしていただけなのかもしれないとも思った。
『あにうえ……っ』
 悲痛な声を思い出し、ヴェインの眉間に深い苦悩の皺が寄った。
 なぜ、止められなかったのか。それほどまでに、餓えていたのか。飢えを満たすためならば、もう少し別な方法があったではないか。二人の兄を手に掛けたときと同じくらい、いや、もしかしたらそれ以上に、ヴェインは後悔していた。
 悔やんでも悔やんでも悔やみきれない。
(私は、あの子の、信頼を裏切ったのだ………)
 白い手袋を嵌めた手を組んで、ヴェインはため息を漏らした。
 もう二度と、ラーサーが『兄上』と慕ってくることはないだろう。これで、すべて、何もかも喪ってしまった。
 慰めの言葉も出なかった。自分の凶行のせいで傷ついたラーサーに、何を言ってやれるというのだ。どうすればいいだろうか、と思うヴェインの元に、女官がやってきた。
 いつの間にノックをして入ってきたのか、ヴェインは気が付かなかった。
「ヴェイン様……こちらは、ラーサー様からです」
 差し出されたのは、手紙だった。女官を労って退室させ、ヴェインはひとつ、深呼吸をして、手紙を開封しようとしたが、指が震えて出来なかった。
 中に、ラーサーはどんな罵りの言葉を投げつけてきているのだろうと思うと、とても、開封する気にはなれなかった。
「………実の弟を、凌辱するなど………獣にも劣る……」
 自嘲して、ヴェインは丁寧に手紙を取り出した。

『親愛なる兄上

 昨夜のことは、忘れてください。兄上が悪いのではないのです。すべて、私が悪いのです。
 ラーサーが愚かでした。兄上は、お気を落とさぬようお願いします。』

 手紙を見た瞬間、涙が出た。あんなおぞましい蹂躙を受けながら、こんなにも優しい言葉で兄を気遣う、ラーサーが哀れでたまらなくなり、ヴェインは体調が悪いのを理由に午後からのすべての政務を手近なジャッジに押しつけて私室に下がった。
 私室では、ラーサーが部屋着のまま、長椅子に腰を下ろしていた。青白い顔に、ヴェインの胸が痛む。ヴェインが帰ってきたことに気が付くと、ラーサーは顔を伏せた。
 互いに、気まずくてたまらなかった。
 それでも、何か言わなければ、とヴェインはラーサーの向かいに座った。いつもならば、ラーサーの隣に座るが、ヴェインはそうしなかった。気遣いだったのだが、ラーサーはそれが悲しかった。
 ヴェインの唇が、何か言葉を紡ごうとしては失敗して、また、真一文字に結ばれる。ラーサーは、酷く気落ちした顔で、ぼーっと自分の手を見つめているようだった。
「………ラーサー」
 口火を切ったヴェインに、ラーサーは応えなかった。仕方がない、と思いながら、ヴェインは慎重に続けた。
「済まなかった………怖かっただろう。………私も恐ろしかったよ。自分が、こんなにも浅ましい欲望に支配されて居ると言うことがね……」
 ラーサーは、やはり、応えなかった。ヴェインはそれでも、辛抱強く続けた。
「何度も何度も、止めようとしたが、結局出来なかった。何を言っても、言い訳になるだろうが………」
 ヴェインの言葉を遮るように、ラーサーが聞いた。
「兄上は、私に、ああいったことをしようと思ったことがおありだったのですか」
 痛烈なセリフに、ヴェインは「いいや」と告げた。ここまで、浅ましい人間だと、弟に思われたことが、辛かった。「お前は、私の大切な弟で……、お前に向ける気持ちは、ああいった情欲の対象ではなかった。いままで、お前を、そう言った邪な視線で見ていたことはない。といっても、信じてもらえんだろうがね」
 ふっ、とヴェインは微笑んだ。そのセリフに、ラーサーの眦から涙が落ちた。
「ラーサー………許してくれとは言わない。今まで通りに戻れるとも、思えない………お前に酷いことをしたのは、私だ。お前を傷つけたのは私だ。お前は悪くない」
「いいえ」
 ラーサーは呟いた。「いいえ、兄上………悪いのは、私です。兄上を貶めるような真似をしました。私は……っ………自分が、許せません」
 ラーサーは拳を自分の膝に叩き付けた。こんなにも激しい感情を見せる弟を、ヴェインは初めて見た。ここまで、追いつめてしまったのだ、とヴェインは唇を噛み締めた。
 ふいに、ヴェインの脳裏を一人の影が過ぎった。
 二人の兄を殺害したあと……狂気して、死んでいった哀れな母。
 こんなにも酷い絶望をラーサーに与えてしまったのだ、ヴェインは思わず背筋がひやりとした。
「ラーサー、聞いてくれ。………お前には、酷い屈辱を与えてしまったのかもしれないが、早まったことは考えないでくれ。どうしても、兄を許せないなら、兄がお前の前から永遠に消える」
 ラーサーは顔を上げた。「いいえ」と頭を振った。横に。
「ラーサー……?」
「………元老院のある方から耳打ちされました」
「元老院………?」
 訝ったヴェインだが、ラーサーの言葉の続きを待った。
「………兄上が、私を邪な目で見ているのだと………」
「っ!!?」
 思わず激高しそうになったヴェインだが、何とか堪えて、淡々と、生気のない声で語るラーサーの言葉を待った。
「私は、確かめてみたくなりました。………それで、昨夜、兄上のお茶の中に、この丸薬を入れさせて頂きました」
 ラーサーは、そっとテーブルの上にいくつかの丸薬を置いた。
「? これは………?」
「軍がドラクロア研究所と共同開発している、媚薬です」
「では………コレのせいで………」
 自白剤代わりの媚薬開発……というのは、耳にしたことがある。まさか、それを、ラーサーが失敬してくるとは思わなかったが、ヴェインは少しだけ胸をなで下ろした。
 やめろと理性が止めようとしても、止まらなかった。これは、仕方のないことだったのだ。それで、昨夜の凶行のすべてが許されるわけではないが、それでも、気は少し軽くなった。
「………兄上は、お忘れかもしれませんが、それで、気分が悪くなったと仰有ったので、肩をお貸しして、ベッドに向かいました」
 そこから先は、ヴェインも良く覚えている。ラーサーを無理矢理ベッドに繋ぎ止め、蹂躙し尽くした。
「ですから、ラーサーが悪いのです。兄上は、なにも………私は、兄上を傷つけるつもりはなかったのです。でも、結果的には兄上の名誉を貶め、兄上を傷つけた……っ!!」
 ヴェインは、ラーサーの側によって、長椅子に座った。
「自分の身体の方が辛かろうに………お前は優しい子だ。………ラーサー」
「兄上………っ!!」
 ラーサーはそのままヴェインに抱きつくと、大声で泣きじゃくった。
 ラーサーには、高い授業料になってしまったが、人と情報を簡単には信じてはならないと言う良い教訓になっただろう、とヴェインは思った。
 愛おしい弟の背中を撫でてやりながら、ヴェインは、それでも、この弟の純真な心こそが美徳とすべき所なのだ、と思っていた。


virtue・end



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初裏でした(笑)
ヴェインは、きっとラーサーを綺麗なままで居させたいから、正気なら手を出したりしないと思います。
ラーサーの方は、ヴェインが慈しんでくれるのが恋情でないと知っても、それでも、口に出せない不安があるから、形としてこういう行為を求めると解釈。
うちのラーサーは、ヴェインより鬱屈している気がする。
それでも、『兄が望むから』清く正しくあるんだろうけどね。

2009.03.01 shino